記事一覧

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

あるレストランの寛容なベジタリアン食対応

今でも忘れられないツアーがあります。

まだ新人の頃だったのですが、アメリカ人36名の団体ツアーにインド系の方が10名ぐらいいました。
全員ベジタリアンというリクエストでした。
私にとっては、初めてのインド系のお客様でした。

静岡の温泉宿では、和食の会席料理だったのですが、ここではベジタリアン食の対応をしていただけたものの、和食が全く食欲をそそらなかったようで、見ただけで10名全員が退席してしまいました。

その後、ある京都のレストランでは、ベジタリアンの対応をしていただいていたのですが、前のことがあったからか、料理が出てくる前に持ち込んだ「インスタント麺」を取り出し、

「これをゆでてほしい」
とおっしゃいました。

和食の店で、持ち込みの上厨房でゆでるなど、日本人の常識では考えられないことで、申し訳ないけどそれはさすがにできないとお断りしました。

でも、お客様はあきらめず、
「いいから、聞いてきて。」
と言います。

店の人に聞いたら、当然「それはできない」と言われました。

大部分のお客様は、聞くだけ聞いてダメだったら、仕方ないとあきらめます。

しかし、このお客様はあきらめませんでした。
かなりワガママな方だったことも確かではありますが、私自身もこういうケースにまだ慣れていなかったため、押されてしまったというのもあると思います。

それで、勝手は承知でレストランの方に「今回だけ何とかしていただけませんか」とお願いしてみたところ、なんと
「今回だけはやりましょう」と言って下さいました。

よくやってくださったなあ、と今でも思います。
その時は必死でしたが、今しみじみと有難いです。

そして、ベジタリアン対応の食事が出てきました。
野菜やキノコのあんかけ丼みたいな料理でした。

それは特にスパイシーなわけでもなかったので、また見ただけで残されたらどうしようと思ったのですが、結果的にはこれが大ヒットでした。
全員完食でした。

その時は、特においしいと言っていなかったのですが、その晩また和食の会席だった時に、

「昼の野菜丼がすごくおいしかった。あれと同じのを作ってほしい。」

と言われました。
そんなにおいしかったんだ、とその時知りました。

結局、直前に料理を変えるのは無理でそのまま会席料理となったのですが、今度は

「ヨーグルトとご飯がほしい。それがあれば持ってきたものと一緒に食べられるから。」

とおっしゃいました。

その時はインド人がヨーグルトをご飯と食べることを知らなかったので、
「ヨーグルト!?」

と思いましたが、とにかくヨーグルトをかき集めて出していただいて、
同時に「持ち込み」の許可も得ました。
その日は退席せず、何とか部分的に食べていただけました。

最後の日の夕食は「神戸牛ステーキ」だったのですが、
インド系の10名は別のインド料理レストランに私が連れて行くことになりました。
私も一緒にインド料理を食べました。

夕食の席で、初めてお客様が

「いろいろワガママを言って悪かったね。でも感謝しているよ。僕たちはMichikoのことを忘れないから。キミは僕たちのことを忘れるかもしれないけど。」

とおっしゃいました。

いや、忘れません(笑)。

私は正直、次々と起こる問題に泣きそうになっていたので、この時初めて救われた気がしました。

というか、お客様も悪気はないわけです。
ただ、「おいしいものを、満足できるものを食べたい」だけなのです。

その時は、そこまで思える余裕はとてもなかったのですが、
そのツアーがベジタリアンの食事を考えるきっかけになりました。

なぜ食べないんだろう?
なにが口に合わないんだろう?
なぜそこまでワガママを言うのだろう?
と、いろいろ疑問を感じて、またそれを解決できない自分のガイドとしての力に自信をなくし、

「どうしたらいいのだろう?」
と気になりました。

そしてその後、大人数のインド人ツアーを担当する機会があり、自分自身も
「カレーやご飯にヨーグルトが合う」
ことを実感として感じることができました。

実際インドに旅行もしてみました。


インド料理 


その結果、ずっとネガティブな経験として残っていたあのツアーを、
乗り越えてガイドとしての成長のきっかけとできたような気が少ししています。

とはいえまだまだ答えは出ないし、そんな単純なことではありませんが。

そして今振り返ってみると、あの時の京都の和食レストランの対応は、
とても寛容で有難いものだったなあ、と改めて感じます。

それに、代わりの料理が和食でありながら口に合っているわけですから、
それもスゴイと思います。

今だったら、私ももっとお客様にうまく説明、説得できると思いますし、
あそこまでレストランに迷惑をかけずにすむと(たぶん)思います。

でも、お客様も何も「迷惑をかけたい」と思っている訳ではないので、
無理を言うことはあっても、やってもらえたらそれなりに感謝はしているのです。

改めて、あの時のレストランの対応にはプロ意識と、懐の深さを感じます。

「できない」「ダメ」というのは簡単なのですが、どこまでお客様の満足に歩み寄れるか。

逆に、プロでないとそこまではできないわけです。

レストランの協力なしにできることでないので、やはりチームとしてもてなす必要があると思っています。

ガイドももちろん、間に立つ調整役として、もっともっと懐を深く余裕をもって対応できるよう、日々研鑽しなければならないなと思います。

大変なことですが、「ありがとう」のために頑張りたいと思います。

まだまだ試行錯誤は続きます。

まずは、この投稿で感謝の気持ちにかえたいと思います。
ありがとうございました。

そして、今後ともよろしくお願いいたします。


※この記事は、「やまとごころブログ」の中の筆者ブログ「英語、ときどきインドネシア語」にも掲載されたものです。
(掲載期間2012年10月~2016年5月) http://www.yamatogokoro.jp/sasayama/
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

英語通訳案内士・篠山美智子

Author:英語通訳案内士・篠山美智子
英語通訳案内士。オーストラリア留学後、前職(日本語教育関係)でインドネシアとマレーシアに計8年滞在。2009年より通訳案内士専業。日本及び海外旅行会社の団体ツアー、個人旅行客(FIT)、企業のインセンティブ・ツアー、政府関係のプロジェクト等に就業。北海道から九州まで日本全国を周る。

ご訪問ありがとうございます!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。