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インドネシア・バリ島のホテルで日本語を教えた時のこと

日本語教師としてバリで約2年間仕事をしていた時、

多くの日本人が観光客としてバリ島を訪れていました。



バリ1 



バリにはリゾートホテルがたくさんありますが、

その中でも当時スタッフへの日本語教育に力を入れたいという2つのリゾート、

GRAND HYATT BALI (ヌサ・ドゥア)とFOUR SEASONS RESORT BALI(ジンバラン)

日本語を教えました。


いずれも、日本人客が多く訪れていたホテルです。



FOUR SEASONS RESORT BALIでは、日本語クラス以外に、

自習用の教材も作成させていただきました。


ヌサ・ドゥア(Nusa Dua)は、スハルト大統領時代に政府が大型高級リゾート地として開発した地域で、

いわゆる国際的大型リゾートが並んでいます。

リゾート以外にも免税店などがあります。入口にゲートがあり、リゾートを利用する人以外は入れないようになっています。


ジンバラン(Jimbaran)は、空港から行くとヌサ・ドゥアの手前にあり、

今はリゾートホテルも随分増えて賑やかになりましたが、

当時はFOUR SEASONS RESORTしか大きなリゾートはなく、隠れ家的な場所でした。



ホテルでは、まずニーズ調査をしました。

スタッフに必要な日本語はどんな場所でどんな状況で使われる日本語

ということを調べて、それに合った授業や教材を準備するためです。



主に日本語が必要なのは

フロント業務(Front reception)」と

飲食業務(レストラン等)(Food and beverage)」ということで、

2つのセクションに分けました。



フロントではチェックイン、チェックアウト、ホテルについての説明、

場所の案内(ホテルが広いので!)などが必要です。

レストランでは、注文や会計、メニューや食べ物・飲み物の説明が主に必要です。


また「電話の応対」も必要ですが、ホテルによってシステムが違うため、必要な言葉も違ってきます。

例えばあるホテルでは、フロント、レストラン、ハウスキーピング、ルームサービスと、

サービスごとに番号が違ってそれぞれのスタッフが対応しますが、

あるホテルでは一括して交換台が受ける場合もあります。

ホテルのシステムを知るのは、私にもとても勉強になりました。



日本人スタッフがおっしゃっていたのは、

スタッフの日本語や行動が失礼と思われて、日本人のお客様とトラブルになることがある。

高級リゾートとしてふさわしい言葉づかいでおもてなしをできるようにしたい。

ということでした。

その原因は主に、

➀日本語では敬語があり、「お客様の話す日本語」と「スタッフが話すべき日本語」が同じではないが、

スタッフがお客様の言葉を「真似して話す」ために、丁寧でない日本語を話してしまう。

②文化習慣の違いから、なれなれしい、失礼と思われてしまうことがある。

また逆に、お客様の言動をスタッフが理解できないこともある。

ということでした。


例えば、「ちょっと待って」はお客様は使いますが、スタッフがお客様に

「ちょっと待って」は失礼になるので、「少々お待ちください」と言うべきところです。

でも「少々お待ちください」という言い方は、日本人観光客は言わないので、

聞く機会もなければ覚える機会もなく、

「なんで怒ったのかな?」

となるわけです。

また、インドネシアでは挨拶代りに「年齢」「職業」「住んでいる場所」など個人的な質問をするのが普通ですが(もちろん人や地域などにも寄りますが)、

日本人ましてやお客様に聞くのは失礼に思われるため、悪気はなくても怒らせてしまうことになるわけです。

あと、日本人は怒る時はわりと頭ごなしに怒鳴りつけたりしますが(特に客の場合)、

これはインドネシアではよくないこととされているので、必要以上にスタッフを傷つけてしまい、

「なんであんなに怒られたのだろう」

と思ってしまうこともあるようです。



これらはほんの一例ですが、できるだけスムーズなコミュニケーションができるようにして、誤解やトラブルを避けられるようにしたいということでした。



インドネシアではインドネシア語」が共通の公用語として使われていますが、

ジャワ語やバリ語など、それぞれの地域、民族によって言語が異なり、

300以上もあると言われています。



実はジャワ語でもバリ語でも「敬語」にあたるものはむしろ日本語以上に複雑にあるので、

敬語を使うという感覚はあります

しかしその使い方は、バリ語だったらヒンズー教カーストによって違うとか、

男女で違うとか、当然概念が違っています。



「日本語の敬語を使う」ということは、我々がバリ語を話すのと同じぐらい難しいことなのは想像すればわかる通りですが、

いずれにせよ外国語の敬語まで勉強するということは、なかなか大変なことです。



かといって、ホテルの現場では、今日すぐにでも日本語を使わなければならない状況があるわけで、1年も2年も時間をかけて敬語を勉強している暇はありません。

それで、授業では毎回、実際にホテルの現場で使えそうな「シンプルなモデル会話」を作って、全員でおじぎをしながら言ってみたり、お客様役とスタッフ役に分かれて「ロールプレイ」をやったり、実用的な練習を主にしました。

細かい文法の違いまでは教えられないのですが、「すぐに話せる」という意味ではこの方法は有効です。

また、「話す」ことが一番の目的なので、ひらがな・カタカナは教えず、ローマ字を使いました。

また言葉以外に「異文化理解」のセッションにも力を入れました。



ケース・スタディ的に、ある事例を挙げてみんなで意見を言い合ったり、

スタッフの方々に、実際現場で起こった

「誤解によるお客様とのトラブル」

の例をあげてもらい、なぜそうなったのか、次回はどう対処すればいいか、

などをみんなで話し合ったりしました。



ホテルの現場の話は本当に新鮮で、私も新しい発見がたくさんありました。

不規則なシフトの中で、定期的に日本語のクラスに参加するのはとても大変なようでしたが、

スタッフは本当に熱心に来てくれました。



インドネシア人はとても明るくて、人懐っこく、熱心なので、

私もとても楽しく授業をさせていただきました。

彼らの笑顔はとびきりで、人当たりも柔らかで、もともとホスピタリティ力のある人たちだと思います。

数か月間通った期間もあったので、毎日スタッフと一緒に従業員用の食事を食べたり、

客としては見ることのない裏側を見ることもできたのは、貴重な経験でした。



徐々にスタッフから

「習った日本語を使ってみたら、通じてお客様にほめられた!」

とか、

「日本語が上手だね、って言われた!」

とか、嬉しい声を聞くようになりました。



また、日本人スタッフの方からも、

「日本語クラスの効果がすごく出ていて、お客様の評判もいいです。」

と言っていただけました。本当に嬉しく思いました。



やはり、「TPOに合った言葉遣いをする」ということは、

サービスの現場においてとても大事なことだと改めて感じました。



その時は、将来自分が通訳案内士として日本で旅行業に携わるとは全く予想していませんでしたが、時を経て今思えば、とても貴重な経験をさせていただいたなあと思います。

日本語は世界でも一番難しい言語のひとつと言われますし、中でも「敬語」は日本人でも正しく使うのは難しかったりもします。

しかし、それでも使われ続けているというのは、やはりそれがコミュニケーションの中で

「大切な機能」だからではないかと思います。

これからも、日本語や外国語と前向きに奮闘しながら、

よりよい「おもてなし」を考えていきたいと思います。



※この記事は、「やまとごころブログ」の中の筆者ブログ「英語、ときどきインドネシア語」にも掲載されたものです。
(掲載期間2012年10月~2016年5月) http://www.yamatogokoro.jp/sasayama/
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プロフィール

英語通訳案内士・篠山美智子

Author:英語通訳案内士・篠山美智子
英語通訳案内士。オーストラリア留学後、前職(日本語教育関係)でインドネシアとマレーシアに計8年滞在。2009年より通訳案内士専業。日本及び海外旅行会社の団体ツアー、個人旅行客(FIT)、企業のインセンティブ・ツアー、政府関係のプロジェクト等に就業。北海道から九州まで日本全国を周る。

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