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「インドネシア人=イスラム教徒」とは限らない

ある旅行会社が、「インドネシア人の団体ツアー」ということで「全員豚肉なし」の手配を、ツアー中食事をする予定の全レストランにしたところ、来日してみると全員中華系


豚肉はもちろんOKで、逆に


豚肉なし?どうして?豚肉が食べたいんだけど。」


ということになり、急きょ逆リクエスト、つまり「豚肉料理を入れてほしい」に変更するということがありました。


これは一例ですが、似たようなことがよく現場で起こっています。なぜでしょうか?

 

米調査機関ピュー・リサーチセンターによると、


世界で最大のイスラム教徒を擁する国はインドネシア


で、13.1%となっています。


また、インドネシア国内でのイスラム教徒の割合は87.2となっています。


参考:http://www.pewforum.org/2012/12/18/global-religious-landscape-muslim/

 


そのせいか、「インドネシア人=イスラム教徒」というイメージを持っている人は多いようです。実際、数の上では多いのは事実ですから、インドネシアでイスラム教が優勢の宗教であることは間違いありません。

 

しかし、そのデータが「日本に来る観光客の割合」と同じわけではありません。


というのは、インドネシアの社会構造を知っていればすぐにわかることですが、インドネシアの経済を握っていると言われる「富裕層」は圧倒的に「中華系」インドネシア人だからです。


中華系インドネシア人はキリスト教徒や仏教徒が多いです。


とはいえ、キリスト教徒は人口の約9.3%、仏教徒はわずか0.6%です。

 

つまり、実際今のところ日本に来ているインドネシア人の多くは、


イスラム教徒ではない


ということです。



以前から政府間の関係も強いインドネシアからは、政府関係者も多く来日しており、その中には「プリブミ(原住民の意)」と呼ばれる人たちが多く含まれています。


しかし、民間企業や自費で観光に来ている人の多くは中華系の人たちです。


 

貧富の差の激しい社会構造による民族間の感情や、宗教間の確執は、1998年に起こった暴動でも見られたように根強いものがあります。


そういう事情を無視すると、国際問題にもなりかねないし、国民感情を逆なでする可能性もあります。

 

一方で、日本では最近イスラム教徒を「ビジネス市場」としてターゲットにしようという動きが急速にみられます。「異文化理解」という観点からすれば、悪いことではないと思います。


しかし、「ビジネス上の利益」のみを考えて特定の宗教だけに偏った対応をするということになれば、イスラム教徒以外の観光客の反感をかう可能性もある、という認識が必要だと思います。


日本に来ている観光客はイスラム教徒だけでなく、ヒンズー教、ユダヤ教、仏教などいろいろな方がいます。

 

イスラム教徒には『ハラル・フード』で対応できるけれど、ベジタリアンやほかの宗教は無理


というのでは、不公平になってしまいます。



日本人は比較的宗教に関しては寛容ですが、それ故に宗教に無頓着なところがあります。


しかし、外国人もそうだとは限りません。

 


ちなみにインドネシアでは、中華料理店もたくさんあります。


最近では、同じモールのフードコート内に豚肉を使う店と使わない店が同時にあるというケースも見られます。


そういう場合は、一例ですが「豚肉を使用しています」という表示がされていたりします。




豚肉使用1 





pork.JPG

また、豚肉を使っていない店では、「NO PORK」の表示が見られました。


決して「HALAL(ハラル)」とは言っていません。


HALAL(ハラル)」は宗教用語であり、イスラム教徒でも人によって「厳密なHALAL」だったり「豚肉を使っていない」という意味だったり、まちまちです。


ですので、異教徒がこの言葉を使うのは適切でないと私は考えます。


よほど本格的にハラル・ビジネスをやりたいというのでない限り、「NO PORK」で十分だと思います。


 

特定宗教に極端な対応でなく、どの宗教の人が来ても、ある程度の対応ができ、気持ちよく滞在してもらえるということが大事ではないでしょうか。



※この記事は、「やまとごころブログ」の中の筆者ブログ「英語、ときどきインドネシア語」にも掲載されたものです。

(掲載期間2012年10月~2016年5月) http://www.yamatogokoro.jp/sasayama/DSCN3380.JPG

 


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プロフィール

英語通訳案内士・篠山美智子

Author:英語通訳案内士・篠山美智子
英語通訳案内士。オーストラリア留学後、前職(日本語教育関係)でインドネシアとマレーシアに計8年滞在。2009年より通訳案内士専業。日本及び海外旅行会社の団体ツアー、個人旅行客(FIT)、企業のインセンティブ・ツアー、政府関係のプロジェクト等に就業。北海道から九州まで日本全国を周る。

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